草間大作(08.6.5)





七日目の終わり



 父さん。
 父さん。

 静かになって、少しだけ、疲れました。

 父さん。
 父さんの遺した言葉の答え、僕にはまだ出せそうにありません。
 こんなにたくさんのことがあって、こんなにたくさんのものを亡くして、それでも見つかりそうにありません。
 いろんなひとが僕に言葉をくれました。心をくれました。力をくれました。
 それでも答えなんか見つからない。
 問いかけ続けることにこそ意義があるのだと、そんな言葉も貰いました。
 僕はそれを少しだけわかったような気がします。
 気がするだけだけど、とちょっと笑った僕の肩を、鉄牛さんが何度か叩いてくれました。戴宗さんが以前、よくそうしてくれたように。
 父さん。
 僕はこれからもずっと答えを探し続けていこうと思います。ロボと一緒に、前に進んでいこうと思います。何が出来るか、どうしたいのか、考えながら、顔をあげていこうと思います。


 だから、今だけ、少しだけ――いいですか。
 父さん、僕、戴宗さんに会いたいです。
 銀鈴さんに会いたいです。
 楊志さんにも、村雨さんにも会いたいです。
 それから、本当は敵だからこんなことおかしいかもしれないけど、口には出来ないけど、アルベルトさんにも、セルバンテスさんにも会いたいです。僕、特に、セルバンテスさんにはずっと、謝りたいような気がしていました。
 あの、幻夜ってひとにも、なんだかちゃんと会ってみたかったような気がします。
 そして何よりも、父さん、あなたに会いたいです。

 こんなに会いたいのに、二度と会えないってことが、死ぬということでもあるんですね。
 声が聞きたいのにもう二度と聞けない、問いかけにも二度と応えてもらえない。そういうことですよね。
 分かっていたことなのに、何度でもこうやって分からされるんですよね――戦い続けることを選ぶなら、僕にはずっとこういうことが待っている。
 何度も何度も。

 父さん。
 あと少しだけ……夜が終わるまでの間だけ、みんなに会いたいって、泣かせて下さい。
 ただの十二歳の子どもの我がままを、今だけ許して下さい。

 もうすぐ八日目の朝が来ます。
 陽が昇って、あのひとたちが夢見た世界が動き出します。
 父さん、僕は――穢れた出来事もうつくしい出来事も、どんな痛みも、忘れずに生きていこうと思います。

 あのひとの涙も抱いて。